万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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志貴皇子(しきのみこ)の御歌一首
神名火(かむなび)の磐瀬(いはせ)の杜(もり)の霍公鳥毛無(ほととぎすけなし)の岳(をか)に何時(いつ)か来鳴かむ
巻八(一四六六)
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神名火の磐瀬の杜に鳴く霍公鳥は毛無の岳にいつやって来て鳴いてくれるだろうか
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この歌は志貴皇子(しきのみこ)の詠んだ一首です。
志貴皇子は天智天皇(てんぢてんわう)の子で、壬申の乱のときにはまだ幼かったために敗北した近江朝廷側の皇子でありながら天武天皇(てんむてんわう)の治世下で生き残ることが許されました。
この歌はそんな志貴皇子が詠んだ一首ですが「神名火の磐瀬の杜に鳴く霍公鳥は毛無の岳にいつやって来て鳴いてくれるだろうか」と、磐瀬(いはせ)の杜に鳴く霍公鳥が毛無(けなし)の岳(おか)にもやって来て鳴くのを待ち望んだ歌となっています。
「神名火(かむなび)」は神の居る場所のことで、各地に神の住むと言われる「神名火(神奈備)」と呼ばれる神聖な場所がありました。※1
※1「神なび:参照」
「磐瀬(いはせ)の杜(もり)」もそんな神名火のひとつで、現在の奈良県三郷町あたりにあったと言われています。
「毛無(けなし)の岳(をか)」は所在が不明ですが、志貴皇子に所縁のあった場所でしょうか。
「霍公鳥(ほととぎす)」は万葉集中の鳥としてはもっとも多く詠われた夏の渡り鳥で、志貴皇子もこの鳥の来訪が待ち遠しかったのでしょうね。
ただ、霍公鳥は中国の古蜀という国の聖帝が亡くなった後に霍公鳥になって昔を懐かしんで鳴いたとの故事から、万葉人たちにとっても故人を意識させ昔を思い出させる懐古の鳥でもあり、また人の魂を運んで来るとされる鳥でもあったようです。
その意味では、あるいは志貴皇子も父の天智天皇たち滅んだ近江朝廷の人々の魂を霍公鳥が運んでやってくるのを待っていたとも解釈できる歌なのかも知れませんね。
奈良県三郷町にある磐瀬の杜。
JR三郷駅のすぐ西にあり線路沿いの小さな公園となっています。
奈良県三郷町の神奈備神社の前には神奈備について書かれたこのような解説板があり、志貴皇子のこの歌も紹介されています。
神奈備神社。
JR三郷駅の北東、三郷駅と龍田大社の中間ぐらいの道沿いにあります。
神奈備神社拝殿。
こんもりとした丘の上にある小さな神社です。
この地もかつて神奈備として人々に信仰された場所のひとつだったのでしょう。
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万葉集巻八
万葉集書籍紹介(参考書籍)
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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