万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
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(解説:黒路よしひろ)

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沙彌(さみ)の霍公鳥の歌一首

あしひきの山霍公鳥汝(な)が鳴けば家なる妹(いも)し常に思(しの)はゆ

巻八(一四六九)
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あしひきの山霍公鳥よ、お前が鳴くと家に残してきた妻のことをいつも思い出してしまうよ
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この歌は沙彌(さみ)が霍公鳥(ほととぎす)を詠んだ一首。
この歌から巻八の夏の雑歌の部の奈良時代の歌になります。

沙彌とは名前ではなく、仏門に入って十戒を受けたばかりの僧のこと。
これはあるい大宰府で大伴旅人(おほとものたびと)などとも交流のあった、造筑紫観世音寺別当の沙彌満誓(さみまんせい)でしょうか(巻三:三三六など参照)。

そんな沙彌の詠んだ一首ですが「あしひきの山霍公鳥よ、お前が鳴くと家に残してきた妻のことをいつも思い出してしまうよ」と、霍公鳥の鳴く声に家に残してきた妻を思い出してしまう心情が詠われた内容となっています。
「あしひきの」は「山」に懸る枕詞。
「山霍公鳥」と詠われていることから、この時、この沙彌は山かそれに近い里(あるいは寺)にいたのでしょうね。

霍公鳥は人の魂を運んでくる鳥とも考えられていた(万葉の時代、霍公鳥に限らず鳥は魂を運ぶ存在と考えられていました)ようですが、そんな霍公鳥の鳴く声に家に残してきた妻が呼んでいるとも感じたのでしょうか。
そう思って読むと、仏門に入ったばかりの沙彌の人間らしい心情が感じられて、なんとも人間味のある一首でもありますね。


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万葉集巻八


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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