万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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大伴家持の霍公鳥を懽(よろこ)びたる歌一首

何処(いづく)には鳴きもしにけむ霍公鳥吾家(わぎへ)の里に今日のみそ鳴く

巻八(一四八八)
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どこかではすでに鳴いていたのだろう霍公鳥がわが家の里で今日こそ鳴いてくれたよ。
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この歌は大伴家持(おほとものやかもち)が霍公鳥(ほととぎす)の飛来して鳴いたのを喜んで詠った一首です。
実際のところははっきりとはしませんが、一応、先の巻八(一四八六)巻八(一四八七)の歌と同じ年の夏の歌として続けて読んでも問題ないでしょう。

歌の内容は「どこかではすでに鳴いていたのだろう霍公鳥がわが家の里で今日こそ鳴いてくれたよ。」と、ようやく家持の家のある佐保の里にも霍公鳥が飛来して初声を聞かせてくれたことを喜んでいます。
例年ならとっくに聞いていたであろう霍公鳥の声。
他の場所ではすでに鳴いてもいたのだろうその声を、待ちに待たされたからこそよりいっそうの喜びとして家持には感じられたことでしょうね。

現代人からするとなぜそこまで霍公鳥の声を聞きたいのかと不思議に思うかも知れませんが、そこには天平時代の人々の風流やあるいは霍公鳥という鳥が懐古の情を感じさせてくれるとくべつな鳥であったことなどの複雑な心情が混ざっていたように思われます。

また、万葉時代の人々は霊力などの宿ったすばらしいものを「見る」ことによってその対象を讃えると同時に、自らの体内の霊力を活性化(タマフリ)させたり、時には逆に拡散しそうな魂を鎮める(タマシヅメ)働きがあるとも考えていたようですが、あるいは家持の霍公鳥の声を聞きたいとのこの風流な願いにもまた「聞く」という聴覚を通じての霊力の活性化を期待するそんな伝統の心情も根底にはあったのかも知れませんね。

それはわれわれ現代人にも、美しい風景を見たり、川のせせらぎを聞いたりすることで心が洗われて生き返るように感じる感覚として受け継がれているようにも思います。


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万葉集巻八


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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