万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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大伴家持の霍公鳥の歌一首

霍公鳥待てど来鳴かず菖蒲草(あやめぐさ)玉に貫く日をいまだ遠みか

巻八(一四九〇)
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霍公鳥を待っているのにやって来て鳴いてはくれないよ。菖蒲草を玉に貫く日がまだ遠いからだろうか。
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この歌は大伴家持(おほとものやかもち)が霍公鳥(ほととぎす)の飛来して鳴くのを待ち望んで詠んだ一首です。
少し前の巻八(一四八八)の歌では霍公鳥の初鳴きを喜んでいますが、こちらの歌はまた別の年の夏に詠んだものなのでしょう。
家持は霍公鳥をとくに好んだようですが、おそらくは毎年のように夏になるとその初鳴きの声を待ち望んでいたのでしょうね。

歌の内容は「霍公鳥を待っているのにやって来て鳴いてはくれないよ。菖蒲草を玉に貫く日がまだ遠いからだろうか。」と、そんな霍公鳥がまだ飛来して鳴かないのは菖蒲草(あやめぐさ)を玉に貫く日が来ていないからだろうかと想像しています。
「菖蒲草」はアヤメのことで、その臭気を除魔のものとして五月五日の節句の薬玉(くすだま)に使うことからここでは「玉に貫く」と詠われています。
つまりは菖蒲の葉を糸で薬玉の魔除けの飾りとして貫くとの意味ですね。

渡り鳥の霍公鳥は大和では五月五日の節句の頃に飛来して鳴き出すので、霍公鳥がやって来ないのは菖蒲草を玉に貫く節句の日もまだ来ていないからなのだろうと家持は自分自身を慰めているわけです。


菖蒲(甘樫丘にて)。
菖蒲は沼地などに生える植物で、その臭気(甘い香りでそんなにひどい匂いではありません^^;)を魔除けとして五月五日の節句の薬玉に葉を飾りとして使用されます。



菖蒲(あやめ)の花。
菖蒲と言うとカキツバタなどに似た花菖蒲(はなしょうぶ)を思い出す人もいるかと思いますが、ここで詠われている菖蒲は「アヤメ」と呼ばれる植物のことで、夏に葉の途中から写真のようなマイクに似た地味な花を咲かせます。


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万葉集巻八


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万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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