万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
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(解説:黒路よしひろ)

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大津皇子(おほつのみこ)の御歌(みうた)一首

経(たて)もなく緯(ぬき)も定めず少女(をとめ)らが織れる黄葉(もみぢ)に霜な降りそね

巻八(一五一二)
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どれを縦糸とも、どれを横糸とも定めずに少女が織りあげた黄葉に霜よ降るな
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この歌は大津皇子(おほつのみこ)が詠んだ一首です。
大津皇子は天武天皇(てんむてんわう)の皇子で、後に皇位争いのために謀反の罪を着せられて殺害されてしまう(巻二:一〇五などを参照)のですが、この歌を詠んだ頃はまだそんな悲劇とは少し距離のある場所にいたのでしょうか。
秋の黄葉を詠って素敵な一首ですよね。

「少女(をとめ)」はこの場合は仙女のことで、歌の内容は「どれを縦糸とも、どれを横糸とも定めずに少女が織りあげた黄葉に霜よ降るな」と、秋の黄葉を仙女が織り上げた錦と見立てて詠んだ一首となっています。
「霜よ降るな」とは、霜が降りて黄葉を枯れ葉にしないでくれとの意味なのでしょうね。
おなじ大津皇子の漢詩に「天紙ハ風筆ニ雲鶴ヲ画キ山機ハ霜杼ニ葉錦ヲ織ル」という似たような内容の詩があり、あるいはこの歌はその漢詩をもとにして詠んだものでしょうか。

大津皇子というとどうしても謀殺された悲劇の皇子としてのイメージで見てしまいますが、このような秋の情景に心を留めて詠んだ歌からは大津皇子の人生のまた違った側面が見えてくるようなそんな気がします。


少女らが織れる秋の黄葉。


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万葉集巻八


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万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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