万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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天の川いと川波は立たねども伺候(さもら)ひ難(かた)し近きこの瀬を
巻八(一五二四)
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天の川にひどく川波が立ってもいないのに様子をうかがいに船出も出来ないよ。こんなに近い川瀬を
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この歌も先の巻八(一五二三)の歌と同じく、山上臣憶良(やまのうへのおみおくら)が七夕を詠んだ十二首の歌のうちのひとつです。
「伺候(さもら)ひ」は様子をうかがうことで、この場合は船を出すよい機会をうかがう意味。
歌の内容は「天の川にひどく川波が立ってもいないのに様子をうかがいに船出も出来ないよ。こんなに近い川瀬を」と、こちらは牽牛の立場で伺候ひの船を出すことも出来ないもどかしさを詠っています。
この歌一首では分かりにくいですが、先の巻八(一五二三)の歌から巻八(一五二六)までの歌を通して読むと、どうやらこれは牽牛が寝屋で織女に向かって語り掛けている形の歌のようですね。
七夕の牽牛織姫伝説は現代人にとってもなじみの深いものですが、考えてみると天の川にこそ隔たれてはいないものの現代人も仕事の都合や様々な理由で愛しい人との関係が隔てられてしまうこともけっこう多いものですよね。
「もっといつでも逢いたいのだけれど都合がつかなくて…」などと、男が恋人に対してその切なさを訴えている姿は共感が出来ますよね。
憶良が詠んだこれらの七夕の歌は、そんな牽牛や織女と、万葉時代の人々、そしてわれわれ現代人のそれぞれが、意外に共通する恋の切なさを抱えていることを感じさせてくれるような気がします。
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万葉集巻八
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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