万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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藤原朝臣八束(やつか)の歌一首

さ男鹿の萩に貫(ぬ)き置ける露の白珠(しらたま) あふさわに誰(たれ)の人かも手に纏(ま)かむちふ

巻八(一五四七)
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さ男鹿が萩の枝に貫いて置いた露の白珠よ。軽々しくも誰が手に纏こうというのか
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この歌は藤原朝臣八束(ふぢはらのあそみやつか)の詠んだ歌一首です。
藤原八束は藤原四兄弟の房前(ふささき)の第三子で、後の藤原真楯。
藤原一族でありながらめずらしく大伴家持と親交のあった人物です。

そんな八束の詠んだ一首ですが、この歌は五七七、五七七の三十八文字からなる旋頭歌(せどうか)となっています。
(旋頭歌についてはまた巻六:一〇一八なども参考にしてみてください。)

歌の内容は「さ男鹿が萩の枝に貫いて置いた露の白珠よ。軽々しくも誰が手に纏こうというのか」と、萩の枝の露を詠った一首で、つまりは萩の枝の露を男鹿が妻のために置いた白珠と見立てて詠んだわけですね。
萩の花は鹿が常に寄り添うことから鹿の妻と考えられていて、それゆえにこのような発想となった訳です。

下三句の「軽々しくも誰が手に纏こうというのか」は、「いいやそんなことなど出来ないだろう」との意味でしょうか。
たしかに鹿が妻に贈った白珠だと思えば、誰も軽々しく自分の手に纏いたりなど出来ませんよね。

そんな風流の中に恋の趣も感じさせる、八束らしい魅力の一首のように思います。


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万葉集巻八


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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