万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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典鋳正紀朝臣鹿人(てんちうのかみきのあそみかひと)の、衛門大尉(ゑもんのだいじよう)大伴宿禰稲公(いなきみ)の跡見庄(とみのたどころ)に至りて作れる歌一首

射目(いめ)立てて跡見(とみ)の丘辺(をかへ)の瞿麦(なでしこ)が花 総手折(ふさたを)りわれは行きなむ寧楽人(ならびと)の為

巻八(一五四九)
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射目を立てて跡見を置く跡見の丘のほとりのなでしこの花。その花をたくさん手折って私は行こう。奈良の京で待つ人のため
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この歌は典鋳正紀朝臣鹿人(てんちうのかみきのあそみかひと)が、衛門大尉(ゑもんのだいじよう)の大伴宿禰稲公(いなきみ)の居る跡見庄(とみのたどころ)を訪れたときに詠んだ一首。
この歌も短歌形式ではなく、五七七、五七七の三十八音からなる旋頭歌(せどうか)となっています。
(旋頭歌についてはまた巻六:一〇一八なども参考にしてみてください。)

紀鹿人(きのかひと)は紀女朗(きのいらつめ)の父。
「典鋳正(てんちうのかみ)」は金属やガラスなどを鋳造する部署である典鋳司の長官のことです。

「大伴宿禰稲公(おほとものすくねいなきみ)」は大伴旅人(おほとものたびと)や大伴坂上郎女(おほとものさかのうへのいらつめ)の弟で、この頃、領地である跡見庄(とみのたどころ)に居たようですね。
「射目(いめ)」は獣を待ち構えて射る場所のことで、この歌の場合は獣の通った跡をうかがう者の意味の「跡見」にかかる枕詞として使われています。
「跡見庄」は所在が不明ですが、奈良県桜井市の外山(とび)付近や、同じく奈良県桜井市の吉隠(よなばり)にある鳥見山(とみやま)山麓の地あたりでしょうか。

そんな伴稲公を尋ねて跡見庄を訪れた紀鹿人が詠んだ一首ですが「射目を立てて跡見を置く跡見の丘のほとりのなでしこの花。その花をたくさん手折って私は行こう。奈良の京で待つ人のため」と、奈良の京で待つ人のために跡見庄のなでしこの花をたくさん手折って帰ろうと詠った内容となっています。

おそらく紀鹿人が訪れたとき、秋の跡見庄の丘にはたくさんの綺麗ななでしこが咲いていたのでしょうね。
そんな跡見庄のなでしこを讃える歌であると同時に、奈良の都に残してきた恋人を思って詠った素敵な旅の一首となっています。


奈良県桜井市等彌神社境内の稲荷神社鳥居前にあるこの歌の歌碑。
等彌神社は桜井市立図書館の東にあります。


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万葉集巻八の他の歌はこちらから。
万葉集巻八


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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