万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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島の宮匂(まがり)の池の放ち鳥(どり)人目に恋ひて池に潜(かづ)かず

島の宮匂(まがり)の池の放ち鳥(どり)人目に恋ひて池に潜(かづ)かず
巻二(一七○)
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島の宮の匂の池の放ち鳥は人の目を恋しがって池に潜ろうともしないよ。
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この歌は草壁皇子が亡くなったことを悼み、柿本朝臣人麿が詠んだ挽歌です。
一説にはこの歌も先の巻二(一六七)の長歌につけられた反歌の一首であるともいわれています。
先にも紹介しましたが、草壁皇子は現在の島庄(石舞台のそば)にあった島の宮という離宮に住んでいました。
ここはもともとは蘇我氏の邸宅で、飛鳥川の水を引きいれあちらこちらに滝や池が作られていたようで、蘇我氏が滅ぼされた後、草壁皇子に与えられたのでしょう。

そしてこの歌では、島の宮の匂(まがり)の池にいる放ち鳥が、皇子の死後は人の目を恋しがって池に潜らないと詠っています。
かつては人々が行き交い賑やかだった離宮…
その離宮が皇子が亡くなったことで活気を失い、いまは人もまばらで寂れてしまった様子が池の鳥を通して伝わってきますね。
草壁皇子がいなくなったことでこんなにも世界は寂しいものになってしまったのですよと…

挽歌とは亡くなった者を惜しむだけでなく死者の魂を慰める想いもこめて詠まれるものですが、この歌にこめられた死者の魂の安寧を祈る言霊は1300年以上経ったいまもその効力を保ってわれわれに言葉の力の偉大さを伝えてくれているようなそんな気がします。


草壁皇子の離宮のあった島の宮は現在の石舞台のある辺り、明日香村島庄(しまのしょう)にあったとされています。
石舞台の西の駐車場からは島の宮跡ではないかといわれる遺跡も発掘されました。


島の宮らしき遺跡の発掘された石舞台西の土地。
現在は埋め戻されて、観光バスなどが停まる駐車場になっています。


石舞台の側にあるお土産処「あすか野」の横からは島の宮の匂(まがり)の池ではないかといわれる池の跡の遺跡が発掘されました。
(こちらも現在は埋め戻されて田圃になっています)


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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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