万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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銀(しろかね)も金(くがね)も玉も何せむに勝(まさ)れる宝子に及(し)かめやも

巻五(八〇三)
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銀も金も玉もどれほどのことがあろうか。どんな宝も子供には遠く及びはしない。
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この歌も山上憶良(やまのうへのおくら)の歌で、先に紹介した巻五(八〇二)の歌の反歌。
こちらも長歌のほうとともに非常に有名な歌ですので、みなさんも一度ぐらい聞いたことがあるのではないでしょうか。
銀も金も玉も、どんな宝であっても子供には敵わないとの思いは、子供を持つ親なら誰でも共感できる素直な気持ちですよね。

山上憶良の歌は万葉集に多く採られていますが、じつはこれらの歌が詠まれた当時やその後の歴史の中でもほとんど注目されることはありませんでした。
唯一、父親の旅人とともに憶良と親交のあった大伴家持が注目して万葉集の中に収録したぐらいのものです。
そんな憶良の歌ですが、しかし戦後の経済成長期の世相に合致したのか、そのころから一躍注目されるようになり、僕の子供のころにはこの「子らを思へる歌」なども学校の授業などでも必ず教わる歌となりました。
そんな経緯も筑紫に赴任してからの晩年に多くの歌を詠んだ大器晩成型の、山上憶良らしいといえばらしい気もしますね。


奈良市油阪の西方寺にあるこの歌の歌碑。
表面は巻五(八〇二)の歌が刻まれており、裏面はこの反歌の歌碑となっています。


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万葉集巻五の他の歌はこちらから。
万葉集巻五


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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