万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

スポンサード リンク


子らを思へる歌一首并せて序

釈迦如来(しゃかにょらい)の、金口(こんく)に正に説(と)きたまはく「等しく衆生(しゆうじよう)を思ふことは、羅候
※1羅(らごら)の如し」と。又説きたまはく「愛(うつくし)びは子に過ぎたるは無し」と。至極(しごく)の大聖(たいしやう)すら、尚(な)ほ子を愛(うつくし)ぶる心ます。況(いは)むや世間(よのなか)の蒼生(あをひとくさ)の、誰かは子を愛(うつくし)びざらめや。

瓜食(うりは)めば 子供思ほゆ 栗食(くりは)めば まして思(しの)はゆ 何処(いづく)より 来(きた)りしものぞ 眼交(まなかひ)に もとな懸(かか)りて 安眠(やすい)し寝(な)さぬ

※1「候」は原文では「目」+「候」

巻五(八〇二)
-----------------------------------------------
瓜を食べると子供のことが思い出される。栗を食べるとまして思い出される。いったい子供へのこの愛情はどこから来たものだろう。愛しい子が目に浮かんでは気にかかり安眠できない。
-----------------------------------------------

この歌も山上憶良(やまのうへのおくら)の長歌。
人生派歌人、人情派歌人などといわれる憶良らしい、子供への愛情を詠った作で、次に紹介する巻五(八〇三)の反歌とともに非常に有名な歌ですのでみなさんの中にもご存知の方も多いかと思います。
「瓜を食べていても今わが子供はどうしているだろうかと思い出させる。栗を食べればあの子にもこの栗をを食べさせてあげたいなあとまして思い出される。どんなに遠くにいても目に浮かんできて思い出され、安眠さえできない。」との子供への深い愛情は、今の世の人々にもすんなりと受け入れられる解説の必要すらないものですね。
万葉時代の人々も子供を思う気持ちはわれわれと何ら変わらないものだったのでしょう。

憶良の歌はこの「子らを思へる歌」や「貧窮問答の歌」など、どれも万葉集の中で異彩を放っていますが、しかしその「調べ(リズム)」は万葉調の重奏な美しさを保っていることも注目すべき点かと思います。
さほど長く無い長歌ですし、この歌もぜひみなさんも声に出して詠いあげてみてください。
千数百年も前の山上憶良という人物のこころが今の時代にそのまま蘇ってくるような不思議な力をそこに感じるはずです。


奈良市油阪の西方寺にあるこの歌の歌碑。
裏には巻五(八〇三)の反歌も刻まれています。



添碑。



西方寺。
境内の西隣に駐車場もあります。


スポンサード リンク


関連記事
万葉集巻五の他の歌はこちらから。
万葉集巻五


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

万葉集入門(トップページ)へ戻る

当サイトはリンクフリーです、どうぞご自由に。
Copyright(c) 2014 Yoshihiro Kuromichi (plabotnoitanji@yahoo.co.jp)


スポンサード リンク


欲しいと思ったらすぐ買える!楽天市場は24時間営業中

Amazon.co.jp - 通販