万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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飛鳥(とぶとり)の明日香(あすか)の里を置きて去(い)なば君があたりは見えずかもあらむ

和銅三年庚戌(かいじゅう)の春、藤原宮より寧楽宮(ならのみや)に遷(うつ)りましし時に、御輿(みこし)を長屋(ながや)の原に停(とど)めて逈(はる)かに古郷(ふるさと)を望みて作れる歌
(一書に云はく、太上天皇(おほきすめらみこと)の御製(おほみうた)といへり)

飛鳥の明日香の里を置きて去なば君があたりは見えずかもあらむ

巻一(七八)
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飛ぶ鳥の明日香の里を後にしていったなら、君のいるあたりを目にすることが出来なくなってしまうかも
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詞書によればこの歌は藤原の宮から奈良の平城京に遷都する時に、御輿を長屋の原(現在の奈良県天理市西井戸堂町・会場町のあたり)に停めて藤原京や飛鳥の里を振り返りながら詠んだ歌とのことです。

ただ、一書にこの歌は持統天皇の作だともあり、それが事実なら平城遷都のはるか以前、飛鳥の浄御原宮から藤原京へ遷都したときの歌になり、この「君のいるあたり」は夫である亡くなった天武天皇の墓所ということになりそうです。

この時代の歌は現代のような文学作品としてではなく、祈りの言葉として詠まれるものがほとんどでしたので、あるいはこの歌ももともとは藤原遷都の際に持統天皇の詠んだ歌を、平城遷都の際に誰かが遷都の途上に皆の代表として唱えたのかも知れませんね。
巻一(一八)の額田王の三輪山の歌のように、新しい都に遷都するときにはこの手の古き京に心を寄せて離れ行く土地の精霊を慰め、これからも見守っていてほしいとの願いを託す歌を詠むのが慣わしでしたので。


明日香村野口にある天武持統天皇陵。
この歌が持統天皇作とすると、飛鳥宮から藤原京への遷都の際に夫である天武天皇の墓所に思いを馳せながら詠まれた歌なのかも。



天理市西井戸堂町大門の山辺御県坐神社にあるこの歌の歌碑。

実際に天理市西井戸堂町のあたりに行ってみると飛鳥宮どころか藤原京もほとんど見えないぐらいの距離ですが、それゆえによりいっそう古き都を離れるさびしさと不安が増してこの歌が詠まれたのかも。



奈良県明日香村の飛鳥川沿いにも歌碑があります。
場所は雷丘の南西、甘樫丘の前。


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万葉集巻一


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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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