万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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宇治間山(うぢまやま)朝風寒し旅にして衣貸(ころもか)すべき妹(いも)もあらなくに

巻一(七五)
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宇治間山の朝風はほんとうに寒いよ。旅先では衣を貸してくれる妻もいないというのに。
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この歌は文武天皇が吉野宮に行幸されたときに同行した長屋王(ながやのおほきみ)が詠んだ一首で、先の巻一(七四)の歌に唱和した歌のようです。
巻一(七四)の歌よりもこちらの歌のほうがより妻を想って心の動揺を鎮めようとする鎮魂歌としての性質が分かりやすい内容になっているかと思います。

宇治間山は、吉野の千股地区の周辺にあった山のことで現代でははっきりとどの山なのかは分かりませんが、明日香村から芋峠を抜けての千股地区の入り口、せせらぎ公園のあたりはいまでも人影まばらな神秘的な場所ですのでみなさんも一度訪れてくださればこの時の長屋王や文武天皇たちの不安な気持ちがよく理解できるかと思います。
ましてや夜ともなればその不安は言葉に尽くしがたいものがあったことでしょう。
そんな吉野の旅での夜の不安を拭うために一心に妻を想って詠った先の巻一(七四)の歌に唱和して、長屋王も妻を想うこの歌を詠みます。
「夜の不安だけでなく宇治間山の朝風もまたほんとうに寒いよ。旅先では衣を貸してくれる妻もいないというのに…」と。

この時代の人々がいかにして旅先の不安で散り散りになりそうな心を、妻を想うことで現生に繋ぎとめようとしたかがよく分かる一首ですね。



吉野にある千股地区の葛上白石神社にはこの歌の歌碑があります。



明日香村から芋峠を吉野の千股に抜けてすぐ、このような場所を矢印のほうに登ると歌碑のある葛上白石神社があります。



こんな感じの場所を登ります。
神社前の広場は広いので車でもOK。



一応、「長屋王万葉歌碑」と書かれた案内の碑が立っていますが、もうほとんど朽ち果ててよほど気をつけていないと気付かないで通り過ぎてしまいます^^;



千股の葛上白石神社。
宇治間山とはかつてはこのあたりの山のことを言ったのでしょう。



歌碑の解説。


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万葉集巻一の他の歌はこちらから。
万葉集巻一


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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