万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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大和(やまと)には鳴きて来(く)らむ呼子鳥(よぶこどり)象(きさ)の中山呼びそ越ゆなる

太上天皇の吉野の宮に幸しし時に、高市連 黒人(たけちのむらじくろひと)の作れる歌

大和(やまと)には鳴きて来(く)らむ呼子鳥(よぶこどり)象(きさ)の中山呼びそ越ゆなる

巻一(七○)
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大和にも今ごろわたしの想いを伝えに呼子鳥(かっこう)が来て鳴いているだろうか。象の中山を吾子(あこ)と呼びながら鳴き渡っていく声が聞こえるよ。
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この太上天皇は持統天皇のこと。
高市連黒人(たけちのむらじくろひと)は巻一(三十二)の歌の作者、高市古人と同一人物でしょうか。
この歌は持統天皇の吉野行幸に高市連 黒人が同行した際に大和(飛鳥)に残してきた家族を偲んで詠んだ一首とのことです。

呼子鳥(よぶこどり)は郭公(かっこう)のことで、「カッコウ」という鳴き声が「吾子(あこ)」などとも聞こえることから、この呼子鳥に子を呼ぶ自分自身の想いを託して詠んだのでしょう。
象の中山は奈良県吉野町の喜佐谷西側にある山で吉野離宮からは大和(飛鳥)とは逆の西に位置していましたが、この場合は象山に鳴く呼子鳥の声を聞いて大和(飛鳥)でもわたしの子を呼ぶ声のように呼子鳥が鳴いているだろうかと思いを馳せているわけですね。

当時の人々は、旅に出たものはみな故郷の家族を想う歌を詠み、家に残った者は旅に出た家族の無事を祈る歌を詠みました。
その歌が言霊となり、大切な人を守ってくれると信じて…
明日香(飛鳥)から吉野離宮のある宮滝へは現在では車で一時間ほどの距離ですが当時は危険な獣が出るかも知れない険しい旅路で、また残してきた家族もいつ病気を患い突然亡くなってしまうかも知れないような時代でした。

それゆえに、高市連黒人の家族を想う心も現代のわれわれの感覚では計れない深い想いがあったことを念頭に置いてこの歌を鑑賞してみて下さい。


吉野町 吉野歴史資料館から見た象山(きさやま)。
象の中山とはこの象山のことです。



吉野歴史資料館前にある宮滝遺跡周辺地図。
中央上に象山が見て取れます。



吉野町 吉野歴史資料館。
(土曜・日曜・祝祭日は事前申込なしで入館出来ますが、平日は事前の申込が必要)
宮滝遺跡の近くにあり、小さな資料館ですが人形劇の装置などなかなか見所のある資料館ですので、お近くまで来られた時はぜひ見学して行ってください。


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万葉集巻一の他の歌はこちらから。
万葉集巻一


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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