万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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やすみしし わご大君 朝(あした)には…

天皇の、宇智(うち)の野に遊猟(みかり)しましし時に、中皇命(なかすめらのみこと)の間人連老(はしひとのむらじおゆ)をして献(たてまつ)らしめたまへる歌

やすみしし わご大君 朝(あした)には とり撫でたまひ 夕(ゆふへ)には い縁(よ)せ立たしし 御執(みと)らしの 梓(あずさ)の弓の 中弭(なかはず)の 音すなり 朝猟(あさかり)に 今立たすらし 暮猟(ゆふかり)に 今立たすらし 御執(みと)らしの 梓の弓の 中弭(なかはず)の 音すなり

巻一(三)
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わが天皇が朝には手に取ってお撫でになり、夕方にはお取り寄せになって立たれるご愛用の梓の弓の中弭に響く音が聴こえてくるようです。朝猟りにいま立たれたようです。夕猟りにいま立たれたようです。ご愛用の梓の弓の中弭の響きが聴こえてきます。
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この歌の大君は先の巻一(二)でも紹介した舒明天皇のこと。
この長歌は舒明天皇が宇智の野で猟りをされていたとき、中皇女の間人老をして献上した歌ということになっています。
つまり中皇女の間人老はこの猟りの場所にはいなくて、他の場所(飛鳥の宮?)から宇智で猟りをする天皇のことを詠ったわけですね。

おそらくは猟りに出た天皇の無事を祈っての言霊としての祈りの歌なのでしょう。
この当時、留守を護る女性は家を離れて旅をする男性の身を案じ、一心に旅の無事を祈る歌を詠みました。
その歌が言霊となって男性の身を護ってくれると信じて…
ですからこの歌も、不吉を打ち払うかのように天皇の猟りの勇ましい姿が詠われていますね。
実際にこんな勇ましい猟りであることの実現を祈っての歌というわけです。

中皇女、間人老については同じ人物のことを指すのかまたは二人の人物なのかなどはっきりとしたことは分かっていませんが、中皇命とは次の天皇の中継ぎとして立つ皇女という意味で皇后か皇女のことになり、ひとりの人物と解釈するなら中大兄皇子の娘の間人皇女あたりかとも言われています。



歌の舞台である宇智の大野とは、現在の奈良県御所市にあるJR北宇智駅の西に広がる一帯で、飛鳥からはかなり離れた場所にあります。


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万葉集巻一の他の歌はこちらから。
万葉集巻一


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万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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