万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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石川郎女の和(こた)へ奉れる歌一首

吾(あ)を待つと君が濡れけむあしひきの山のしづくに成らましものを

巻二(一○八)
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私を待ってあなたが濡れたという山のしずくに私もなりたいものだわ
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この歌は先の大津皇子の(一○七)の恋歌に対する石川郎女の返歌です。
大津皇子が石川郎女を待って山の雫に濡れてしまったと詠ったのに対して、あなたを濡らしたという雫に私もなりたいものですと逢えなかった寂しさをうったえている訳ですが、意味を恋歌として素直に取れば女性らしい可愛げのある一首だといえますね。

それにしてもこの相聞歌、不思議なのはなぜ屋敷ではなく山で逢うことになったのかということです。
なにか隠れて逢わねばならない理由でもあったのでしょうか。
実は石川郎女は草壁皇子の后であり、この大津皇子との関係は不倫であったとも伝えられています。
しかし、石川郎女はなかなかに恋多き女性で、他にも大伴田主や大伴宿奈麿とも恋仲にあったらしいことから、僕は草壁皇子も恋人の一人であって夫婦ではなかったのではないかと思っています。
そして草壁皇子の恋人であった石川郎女を大津皇子が奪おうとしたのだと解釈すれば、この秘密の逢瀬も納得が行くような気がしますね。

一応、この歌についても解釈の仕様によっては「あなたを(涙で)濡らすことは出来ない」つまり「あなたの愛は本物ではないのでしょう」と大津皇子を突き放しているとも取れなくはないのですが、しかし次の歌で大津皇子と石川郎女が結ばれていることから考えてやはりこの二人は恋人関係にあったのだと僕は思うのです。



香芝市中央公民館にある先の巻二(一○七)の
歌碑。



おなじ歌碑の反対側にこの巻二(一○八)の歌も
刻まれています。




側には大伯皇女の巻二(一六五)の歌の歌碑もあります。


うつそみの人にあるわれや明日よりは二上山(ふたかみやま)を弟(いろせ)とわが見む


香芝市中央公民館は香芝市役所の南、香芝市総合体育館の敷地内にあります。
近鉄下田駅から徒歩で約15分ほど。


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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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