万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

スポンサード リンク


或る本の反歌一首

皇(おほきみ)は神にし坐(ま)せば真木(まき)の立つ荒山中に海を成すかも

巻三(二四一)
-----------------------------------------------
大君は神でいらっしゃるので真木の立つ荒々しい山の中に海をお作りになります。
-----------------------------------------------

この歌も先の巻三(二四〇)の歌と同じく、巻三(二三九)の長歌に付けられた反歌で、長皇子(ながのみこ)が猟に出たときに柿本人麿が(かきのもとのひとまろ)が詠んだ一首。

序書に「或る本の反歌」とあるのは、「皇は神にし坐せば…」の慣用句を持った反歌は巻三(二三五)の歌などにもあるようにいわば形式化されていて、その場合独立した一首としての性質を強めて反歌から脱落する傾向にあったようです。
そのため、この巻三(二四一)の歌も書によって反歌として収録される場合と独立した歌として反歌に入れられない場合が存在したのでしょう。

この歌は長皇子が猟りに出たときに人麿が詠んだものですが、初句の「皇(大君)」はこの場合は亡くなった天武天皇(もしくは持統天皇)を指していると解釈したほうがいいでしょう。
「天皇は神でいらっしゃるので荒々しい山の中に海をお作りになった。」と詠っていますが、この場合の「海」ももちろんほんとうの海ではなく、猟地の池をこう表現したわけです。
これは巻三(二三五)の雷丘の歌でもそうですが、実際に池が海に見えたわけではなく、このように詠うことで天皇と朝廷の力を誇示し、天皇の神としての力の実現を願った呪術歌なわけですね。


倉橋溜池のふれあい公園にあるこの歌の歌碑。
(桜井市森林組合の前です。)



皇は神にし坐せば真木の立つ荒山中に海を成すかも



歌碑の前の溜池。
この歌は鹿路(ろくろ)の池での猟りの時に詠まれたものと云われていますが、この溜池は鹿路の地からずいぶん北に位置しているので歌の中の池(海)とはまったく関係なさそうです^^;


スポンサード リンク


関連記事
万葉集巻三の他の歌はこちらから。
万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

万葉集入門(トップページ)へ戻る

当サイトはリンクフリーです、どうぞご自由に。
Copyright(c) 2014 Yoshihiro Kuromichi (plabotnoitanji@yahoo.co.jp)


スポンサード リンク


欲しいと思ったらすぐ買える!楽天市場は24時間営業中

Amazon.co.jp - 通販