万葉集入門
万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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住吉(すみのえ)の岸野(きしの)の榛(はり)に匂(にほ)ふれど匂(にほ)はぬわれや匂(にほ)ひて居(を)らむ 八

巻十六(三八〇一)
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住吉の岸の野の榛で色を染めても美しく染まらない私ですが、翁の教えには染められていることでしょう
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この歌も、巻十六(三七九四)の歌などと同じく、竹取の翁が詠んだ万葉集巻十六(三七九一)の長歌と二首の歌に、九人の仙女たちが和えて詠んだ歌の一つ。
「住吉」は大阪市住吉区を中心とした一帯の地。
「榛(はり)」は植物のハンノキのこと※1で、衣を黒く染めるのに使用されたようです。
これらは、竹取の翁が詠んだ万葉集巻十六(三七九一)の長歌で「住吉の小野の榛で彩った衣」を詠っていることに呼応しての表現でしょうか。
そんな榛を例に出して「住吉の岸の野の榛で色を染めても美しく染まらない私ですが、翁の教えには染められていることでしょう」と、この仙女もまた翁の教えに従うことを宣言しています。

それまでの仙女たちの歌が結句を「われも寄りなむ」と統一して連帯感を出していたのに対して、ここではまた同じ意味ながら少し表現に違った変化をつけることで歌物語の聞き手を飽きさせない工夫もされています。
このあたりは現代短歌で連作を詠む時にも参考になるかも知れませんね。

※1一説には萩の花とも。


奈良県広陵町の竹取公園の前の馬見丘陵公園にある「古の丘」。
近くには竹取の翁ゆかりの讃岐神社もあり、なんだかほんとに仙女に出逢えそうな雰囲気ですよね。
馬見丘陵公園は広陵町と河合町にまたがる大きな公園で、南エリアなどでは多くの万葉植物を観察することも出来ます。



馬見丘陵公園の榛(ハンノキ)。



榛(ハンノキ)は万葉の時代には実や樹皮を使って染料として利用されたそうです。


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万葉集巻十六の他の歌はこちらから。
万葉集巻十六


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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