万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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潮騒(しほざゐ)に伊良虞(いらご)の島辺(しまへ)漕ぐ船に妹乗るらむか荒き島廻(しまみ)を
巻一(四二)
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潮騒の中を伊良虞の島のあたりを漕ぐ船に妻は乗っているだろうか、荒々しい島の周りを。
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この歌もとくべつな題詞はつけられていませんが、巻一(四〇)の歌と同じく持統天皇が伊勢に行幸された際に、飛鳥の京に残った柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)が詠んだものとみて間違いないでしょう。
「伊良虞の島」は愛知県渥美郡渥美町神島のことで、伊勢からも船で近いのだと思われます。
内容的には次の巻一(四三)の歌と正反対で夫が旅先の妻の無事を案じて詠んでいる内容となっていますが、これは実際に人麿の妻が伊勢行幸に従駕した女官の中にいたわけではなく、おそらくは従駕した女官の夫で飛鳥京に残った者たちの立場に立って詠んだのでしょう。
この時代の歌はいまの文学作品としての歌とはまったく違い呪術的な言霊の言葉ですので、従駕した女官の夫たちもきっと人麿が詠んだこれらの歌を一心に唱えて妻の無事な帰郷を祈ったのではないでしょうか。
あるいは大宮人たちのためにこれらの歌を詠むことも、宮廷歌人としての柿本人麿のひとつの仕事であったのかも知れませんね。
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万葉集巻一
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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