万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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長皇子の御歌
吾妹子(あぎもこ)を早見浜風大和なる吾(わ)をまつ椿(つばき)吹かざるなゆめ
巻一(七三)
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わが愛しき妻を早く見たいものだなあ。早き浜風よ大和で私を待つ松と椿に吹き忘れずに伝えてくれ。
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この歌は長皇子が旅先で詠んだ一首。
おそらくは巻一(七一) や 巻一(七二)の歌と同じく文武天皇の難波行幸に従駕したときに詠んだものでしょう。
内容としてはこの歌も旅先での不安な心を家に残してきた妻を想うことで鎮めようとした旅の鎮魂歌ですね。
「早見浜風」はこの場合は「(妻を)早く見たい」と「早く吹く浜風」の両方を掛けています。
おなじように「まつ」も「待つ」と「松」の両方の意味が掛けてあり、「まつ椿」で松の下の椿を詠んでいるわけですね。
そんな浜を吹く風に「大和まで吹いて行って大和の松と椿に妻を早く見たいというわが想いを忘れずに伝えてくれ」と頼んでいるわけですが、つまりは大和の家で自分を待っている妻にも伝えてくれとの意味なのでしょう。
このように万葉集の時代の人々は旅先にあって常に家の妻を想って歌を詠み、妻との心のつながりを保つことで旅先での悪しき厄災からその身を護ろうとしたのです。
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万葉集巻一
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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