万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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山上憶良の追いて和(こた)へたるる歌一首

天翔(あまがけ)りあり通(がよ)ひつつ見らめども人こそ知らね松は知るらむ


右の件(くだり)の歌どもは、柩(ひつぎ)を挽(ひ)く時作る所にあらずといへども、歌の意(こころ)を准擬(なそら)ふ。故以(ゆゑ)に挽歌の類に載す。

巻二(一四五)
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皇子の霊は磐代の松の上を天翔けて通いつつ見ているだろうか。人間の目には見えず知らなくとも松はよく知っていることだろう。
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この歌も磐代の浜での有間皇子の魂を慰めた鎮魂歌で、先の巻二(一四三)巻二(一四四)の長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ)の二首の歌に山上憶良(やまのうへのおくら)が唱和して詠んだ一首です。
この時期の憶良はまだ遣唐使として唐へ渡る以前の下級官僚だったはずですが、持統天皇の紀伊行幸に従駕出来る立場にはすでにいたようですね。

「人こそ知らね松は知るらむ(人間の目には見えず知らなくとも松はよく知っていることだろう)」とは、人間の目には実際に霊は見えないけれどとの意味ですが同時に松は知っているだろうと詠っているので、目には見えていない憶良たちも有間皇子の魂が空を飛んでいる気配はたしかに感じてはいるわけです。
この歌も「目には見えませんが皇子の魂がいらっしゃることは存じていますよ」との、孤独な魂を慰める語り掛けの言葉として強い呪術性をもって迫ってくるような一首ですね。

以上、巻二(一四三)の歌からこの歌までが、持統天皇の紀伊行幸時に詠まれた有間皇子への鎮魂の挽歌でした。


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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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