万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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石川夫人(いしかはのぶにん)の歌一首
ささ浪の大山守(おほやまもり)は誰(た)がためか山に標結(しめゆ)ふ君もあらなくに
巻二(一五四)
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ささ波の御山の番人は誰のために山に標を結って守っているのでしょう。もう天皇が亡くなってこの世にはいらっしゃらないというのに。
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この歌も天智天皇が亡くなったときに石川夫人(いしかはのぶにん)が詠んだ挽歌です。
石川夫人は蘇我石川氏出身の夫人で、「遠智娘(おちのいらつめ)」や「姪娘(まいのいらつめ)」と同一人でしょうか。
額田王の巻二(一五一)の歌では船の出入りを禁じる海の「標」が出てきましたが、こちらの歌では山を守るための「標」が詠われています。
この時代、朝廷は各地に山守を置いていたようです。
「天皇が管理し大切になさっていた御山を守る番人は山に標を結って誰のために守っているのか。もう天皇もいらっしゃらないのに…」との、天智天皇を喪った夫人の喪失感が伝わってくるような一首ですね。
この時代の皇族への挽歌には、この歌のように亡くなられた天皇や皇子がこの世を去ったためにこの世のすべてが空しいものになってしまったと詠い、亡くなった天皇や皇子の魂を慰める鎮魂の形がよく取られました。
先の巻二(一五三)の歌の解説でも書きましたが、これらの歌を詠んでいると、万葉に時代の人々がいかに死者の魂を自分たちの側に感じて生きていたかがよく分かりますね。
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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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