万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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また反歌一首

ささなみの志賀(しが)さされ波しくしくに常(つね)にと君が思(おも)ほせりける

巻二(二〇六)
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ささなみの志賀の岸辺の波のように常にありたいとあなたは思ってらっしゃったなあ
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この歌は、弓削皇子(ゆげのみこ)の死を悼む巻二(二〇四)の長歌と巻二(二〇五)の反歌のあとにさらにもう一首付けられている反歌。
おそらくは巻二(二〇四)の長歌などとおなじく置始東人(おきそめのあづまびと)の作ではないかと思われます。

なぜこのような異例の形での集録となったのかははっきりとは分かりませんが、天武天皇亡き後の持統、文武天皇の治世下で微妙な立場(皇位を争えるような立場)にあった長皇子と弓削皇子兄弟にあまり感情移入した歌を表には出したくないという置始東人の遠慮がこのような形での発表となったのかも知れませんね。
最初はこの歌も含めた二首の反歌が付けられていたのを、弓削皇子の亡くなった時期の文武天皇の治世下では巻二(二〇四)の長歌と巻二(二〇五)の反歌一首のみが発表され、その後(文武天皇亡き後)のほとぼりが冷めたころにはじめてこの巻二(二〇六)も世に出たのではないでしょうか。

歌の内容としては、病弱だったとされる弓削皇子が常日頃から「志賀の岸辺に打ち寄せる波のように常に変わらずありたいとあなたは思ってらっしゃったなあ」と、皇子との交流の深さが感じられるような一首になっていますね。
おそらくはこの一首こそ置始東人が弓削皇子のためにほんとうに詠いたかった挽歌だったのではないでしょうか。


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万葉集巻二


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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