万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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大宰少弐小野老朝臣(だざいのせうにをののおゆのあそみ)の歌一首

あをによし寧楽(なら)の京師(みやこ)は咲く花の薫(にほ)ふがごとく今盛りなり

巻三(三二八)
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青丹美しい奈良の京は咲く花の匂うかのように今盛りです。
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この歌は、筑紫の地方機関である大宰府(現代の福岡県太宰府)の地に大宰少弐として派遣されていた小野老(をののおゆ)が、奈良の京を賞讃して詠んだとされる望郷歌。
大宰少弐は大宰府の次官で、小野老は立場上はこの時期、大宰師として派遣されていた大伴旅人(おほとものたびと)の部下ということになります。

歌の内容としては「奈良の京はいま咲く花の匂うかのように盛りです」との望郷歌ですが、小野老は在任中に一度「朝集師」として大宰府の実情を朝廷に報告するために奈良の京に戻っているので、あるいはその時の奈良の様子を大宰府の人々に伝えるために詠んだ一首と解釈したほうが自然かも知れませんね。
この歌からしばらく、大宰府に派遣されている人々による奈良の京を偲ぶ望郷歌が続くのですが、これらの歌もすべて朝集師として奈良に戻っていた小野老が再び大宰府に帰ってきたことを祝う宴の席でのものだったのかも…

ちなみに、小野老が朝集師として奈良に戻っている期間中に奈良の京では謀反を企んだとして長屋王が追い詰められ自害させられる「長屋王の変」という大事件が起こっているのですが、それにしてはこの小野老の歌はそんな暗さを一切感じさせない明るいものとなっています。
(長屋王の変については巻三:四四一を参照。)
長屋王の変の後、京では藤原氏寄りの人々がみな昇進しているのですが、この小野老もまたその時期に十五位下から十五位上に昇進していることから小野老は藤原家寄りの人物であったとも言われています。
そうだとすると、小野老の大宰大弐としての派遣は、長屋王寄りの大伴旅人を監視する役目も担っていたのかも知れませんね。(巻三:三三八なども参照)

藤原氏寄りの小野老にとっては、長屋王が自害し藤原四兄弟が実権を握った奈良の京はまさに「花の匂うかのように今盛り」だったのではないしょうか。


奈良市西九条と大和郡山市観音寺町の境の羅城門跡(西九条緑地公園)にあるこの歌の歌碑。
この歌碑はもともと平城宮跡の朱雀門前の公園にあったのがこちらに移されたそうです。



西九条緑地公園(羅城門跡横)。
イオンモール大和郡山の北西すぐ。



羅城門橋欄干にある解説板。



平城京羅城門の復元図。



羅城門は朱雀大路の正門として建てられ、奈良の京のまさに玄関口でした。



羅城門橋の南方面。
現在は佐保川の底になっている場所から羅城門の遺構が発掘されたそうです。
(写真左にある水量管理施設の手前のあたり。)



羅城門橋から北を見た平城京跡(かつての朱雀大路)方面。
肉眼でわずかに朱雀門や大極殿が見えるか見えないかの距離です^^;


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万葉集巻三の他の歌はこちらから。
万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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