万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

スポンサード リンク


防人司佑大伴四綱(さきもりのつかさのすけおほとものよつな)の歌二首

やすみししわご大君(おほきみ)の敷(し)きませる国の中(うち)には京師(みやこ)し思(おも)ほゆ

巻三(三二九)
-----------------------------------------------
すべての国土を治めになるわが大君の支配なさる国の中では奈良の京がやはり思い出されるなあ。
-----------------------------------------------

この歌は、大伴四綱(おほとものよつな)の詠んだ二首の歌のうちのひとつ。
防人司(さきもりのつかさ)は大宰府の防人を掌る官職。
佑(すけ)は次官。
大伴四綱という名から、旅人と同じ大伴一族の人間であることが想像できますね。

この歌は先の小野老(おののおゆ)の巻三(三二八)の歌と並んでいることやその内容から、巻三(三二八)の歌と関連した同じ時期に同じ場所で詠まれたものと思われます。

おそらくは小野老の大宰府への帰還を祝う宴の席で詠まれた歌で、この後の山上憶良の巻三(三三七)の「宴(うたげ)を罷(まか)るの歌」までが関連した一群のようですね。

大宰府の様子を報告する「朝集師」としての役目を終えて奈良の京から戻ってきた小野老が詠んだ一首「あをによし寧楽の京師は咲く花の薫ふがごとく今盛りなり」の歌から、四綱たちも故郷である奈良の京のことが恋しく思い出されたのでしょう。
「天皇のお治めになる国土は広いけれど、そのなかでも特に恋しく思われるのは奈良の京です」との、切実な望郷の思いが詠われていますね。

他の地方機関に比べて筑紫は新羅などとの対外的な防衛や外交の重要拠点でしたがこの時期はまだそれほど緊迫した状況下にはなく、奈良の京から派遣される者たちの心の中には京から遠く離れた地でのいつ終わるかも知れない勤めに望郷の念が常に感じられていたことでしょう。
そんな大伴四綱の中の望郷の想いが、小野老の歌によって抑えられなくなって顔を出した一首なのでしょう。


スポンサード リンク


関連記事
万葉集巻三の他の歌はこちらから。
万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

万葉集入門(トップページ)へ戻る

当サイトはリンクフリーです、どうぞご自由に。
Copyright(c) 2015 Yoshihiro Kuromichi (plabotnoitanji@yahoo.co.jp)


スポンサード リンク


欲しいと思ったらすぐ買える!楽天市場は24時間営業中

Amazon.co.jp - 通販