万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大伴宿禰駿家持(やかもち)の同じ坂上家(さかのうへのいへ)の大嬢(おほをとめ)に贈(おく)れる歌一首
石竹(なでしこ)のその花にもが朝(あさ)な朝(さ)な手に取り持ちて恋ひぬ日無(な)けむ
巻三(四〇八)
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君が撫子の花であったならなあ。毎朝毎朝手に取って恋しく思わない日はないだろう。
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この歌は大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)が同じ大伴家の坂上大嬢(おほをとめ)に贈った一首。
先の巻三(四〇七)の歌の大伴駿河麿(おほとものするがま)は大伴家持の又従兄になり、駿河麿が求婚した二嬢は家持がこの歌を贈った大嬢の妹になります。
また、家持の父の大伴旅人(おほとものたびと)と、大嬢の母の大伴坂上郎女(おほとものさかのうへのいらつめ)は異母兄妹であり、家持と大嬢は従妹の関係にもなります。
この一首はそんな坂上家の大嬢に家持が贈った恋歌ですが…
少し前に紹介した巻三(四〇三)の歌では大嬢のことを玉に譬えて毎朝見たいと詠った家持ですが、こちらでもおなじく大嬢を撫子の花に譬えて毎朝手に取って愛でたいと訴えていますね。
まあ、それだけ大嬢のことを恋しく思う朝が多かったということでしょうか。
あるいはこの頃の家持は、大嬢を夢に見て目覚める朝を繰り返していたのかも知れませんね。
武門の名門大伴家の男児でありながらそんな繊細な精神を感じさせてくれるのも、万葉集の編者といわれる家持らしい側面の一首のように思います。
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万葉集巻三
万葉集書籍紹介(参考書籍)
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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