万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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みつみつし久米(くめ)の若子(わくご)がい触(ふ)れけむ磯(いそ)の草根(くさね)の枯れまく惜(を)しも
巻三(四三五)
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かつて勢いを誇った久米の若子が触れたという磯の草が枯れるのは惜しいことだなあ
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この歌も先の巻三(四三四)の歌と同じく、河辺宮人(かはべのみやひと)が姫島(ひめしま)の松原(まつばら)を通ったときに、娘子(をとめ)が倒れて亡くなっているのを見て哀しんで詠んだ四首の歌のうちのひとつ。
「久米(くめ)の若子(わくご)」は、伝説の人物でこの人物が主人公の流離伝説が当時、各地にあったようです。
(巻三:三〇七なども参照)
そんな「かつて勢いを誇った久米の若子が触れたという磯の草が枯れるのは惜しいことだなあ」と、磯の草の枯れてゆくのを惜しんだ内容となっています。
巻三(三〇七)によると久米の若子がかつて居たという石室が三穂の地にあったようですが、この「三穂」が巻三(四三四)の歌の「風早の美保(みほ)」と同じ地だとするならこれもやはり河辺宮人が美保の浦を訪れたときに、姫島の松原で行き倒れになっていた娘子のことを思い出してあらためて詠んだ歌ということでしょうか。
久米の若子と姫島の松原で行き倒れになっていた娘子との間に直接の関係はなかったはずですが、おそらくは「久米の若子」を女性の恋人、「磯の草根」を亡くなった娘子に見立てて詠んだ一首なのでしょう。
つまりは、かつて恋人の手によって触れられた麗しい娘子の命が失われてしまったことを哀しんだ挽歌なわけですね。
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万葉集巻三
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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