万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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往(ゆ)くさには二人(ふたり)わが見しこの崎を独(ひと)り過ぐればこころ悲しも
〔一(ある)は云はく、見もさかず来(き)ぬ〕

右の二首は、敏馬の崎を過ぎし日に作れる歌なり

巻三(四五〇)
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往くときには二人で見たこの崎を独りで過ぎればこころが悲しいことだ。〔一は云はく、遠くなっても見続けて来たことだ。〕
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この歌も巻三(四四六) や 巻三(四四七)の歌などと同じく、大伴旅人(おほとものたびと)が大宰師(大宰府の長官)としての三年近い任期を終えて奈良へ戻るときに詠んだ五首のうちの一首で、大宰府で亡くなった妻を偲ぶ歌。
「この崎」は巻三(四四九)の歌と同じく「敏馬の崎」で現在の兵庫県神戸市灘区のあたり。

左注によるとこの歌も巻三(四四九)の歌も、共に敏馬の崎を過ぎた日に詠んだものとのことです。

内容としては「大宰府に赴任して往く時には妻と二人で見たこの敏馬の崎を、帰りにひとりで通り過ぎるとこころが悲しいことです〔一は云はく、独りで通り過ぎ、遠くなっても見続て来たことです〕」との、先の巻三(四四九)の歌とほぼ同じ内容で亡き妻への思慕の思いが詠われています。

このようにおなじような内容の歌を何度も繰り返し詠んでいるのは、それだけ旅人の亡くなった妻への思いが深い証拠なのでしょうね。
振り返ってみても帰っては来ない過去と知りながら、妻とともに見た敏馬の崎を何度も何度も見返さずにはいられない旅人だったのでしょう。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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