万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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夏野(なつの)ゆく牡鹿(をしか)の角の束(つか)の間(ま)も妹(いも)が心を忘れて思へや
巻四(五〇二)
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夏野をゆく牡鹿の角が生え変わるまでの束の間も君への思いを忘れたことなどありません
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この歌も巻四(五〇一)の歌と同じ柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)の詠んだ歌とされる三首のうちのひとつ。
単純に恋歌として解釈するなら、恋しい想い人に向かって詠んだ一首とも取れますが、次の巻四(五〇三)の歌で妻のことを詠っているのでこの歌ももしくはすでに人麿の妻となった女性に詠い掛けた一首であるのかも知れません。
(だとすれば旅先で妻を思って詠んだ一首との解釈も可能で実際に野の鹿を見ての一首とも読めますが、題詞には何も書かれていないのでここでは一応、恋人か妻などへの恋歌と解釈しておきます。)
「牡鹿(をじか)」はオスの鹿のことで、鹿の角は夏に生え変わるので「夏の牡鹿の角が生え変わるまでの束の間も…」と、束の間のわずかな時間ですらも君への思いを忘れたことがない愛しい思いを訴えかけているわけですね。
巻四(五〇一)の歌の時にも書きましたが、人麿はこういう女性のこころに訴えかける恋歌を詠むのもほんとうにうまいですよね。
女性なら(男性でも?)一生に一度ぐらいはこんなふうに異性から熱烈な思いで愛してほしいと思うのではないでしょうか。
こんな歌を詠い掛けられたら、相手の女性もきっと人麿の想いに応えたくなったことでしょう。
夏の牡鹿。
鹿の角は夏に生え変わります。
こちらは新しい角に生え変わった牡鹿。
鹿の角はわずかの時間で生え変わります。
そんな束の間でさえも君への思いを…
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万葉集巻四
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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