万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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湯原王のまた贈れる歌一首
はしけやし間近き里を雲居(くもゐ)にや恋ひつつをらむ月も経(へ)なくに
巻四(六四〇)
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愛おしいあなたの居る里を雲居の彼方のように感じながら恋つづけるのでしょうか、ひと月も経っていないというのに…
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この歌も湯原王(ゆはらのおほきみ)が旅先で出会った娘子(をとめ)に贈った巻四(六三一)の歌からつづく一連の相聞歌の内のひとつ。
こちらは湯原王の作で「愛おしいあなたの居る里を雲居の彼方のように感じながら恋つづけるのでしょうか、ひと月も経っていないというのに…」と、娘子と逢えない日の続いたことを嘆いています。
ただ、巻四(六三八)の歌で「たった一夜逢えなかっただけなのにまるでひと月も経ったかのように心が曇ります」と一夜でさえ逢えずにいるのは堪えられないと詠ったころに比べて、こちらの「まだひと月も経っていないのに…」との表現には湯原王の娘子への愛情が薄れだしているような微妙な心境の変化が感じられる内容になっています。
おそらくは娘子との逢瀬を重ねるうちに、あれだけ娘子を愛おしく思っていた湯原王の愛情が冷めはじめたのでしょうね。
思い返せばもともとは求婚する湯原王を泊めもせずに帰した娘子がやがて湯原王を愛し、自分から娘子との関係を求めた湯原王がやがてその気持ちが冷めてしまうなど、この一連の歌物語は、よい意味でもわるい意味でも人の心の移り変わりが主題であったのかも知れませんね。
まあ、それは人の人生そのものも同じなのかも知れませんが…
湯原王と娘子の恋の物語もそろそろ終わりの時を迎えつつあります。
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万葉集巻四
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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