万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大伴坂上郎女(さかのうへのいらつめ)の歌一首
心には忘るる日無く思(おも)へども人の言(こと)こそ繁(しげ)き君にあれ
巻四(六四七)
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心には忘れる日もなく思っていますのに、恋の噂の絶えないあなたですものね…
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この歌は大伴坂上郎女(おほとものさかのうへのいらつめ)が詠んだ相聞歌。
こちらも先の巻四(六四六)の歌と同じく題詞からだけでは誰を思って詠んだのかはっきりしませんが、この歌の前後に大伴駿河麿(おほとものするがまろ)の歌があり、巻四(六四九)の歌の左注に駿河麿と坂上郎女が「歌を題(しる)し送り答へ、起居を相問(あひと)へり。」と書かれているので、この二人が恋歌の形を取ってお互いの近況を訪ねあった戯れ歌の返歌と解釈しておきます。
先の巻四(六四六)の歌で駿河麿が「立派な男子ともあろうものが侘しく思いつつ繰り返し嘆く、こんな嘆きをあなたは気づかないのですね。」と恋歌の形を取って近況を尋ねたのに対して、こちらでは「私は心には忘れる日もなく思っていますのに、恋の噂の絶えないあなたですものね…」と返しています。
恋歌の形で贈って来た駿河麿に対してこちらも恋歌の形で返した見事な返歌ですが、つまりは「私は忘れる日もなく思っていますのに、あなたのほうこそ恋に忙しくてお手紙もよこしてくださいませんね…」との意味なわけですね。
なかなかに見事な掛け合いで、一門に万葉集の編者ともいわれる家持を輩出した大伴家のふたりらしい相聞歌といえるのではないでしょうか。
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万葉集巻四
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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