万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大伴宿禰家持の和(こた)へたる歌一首
百年(ももとせ)に老舌出(おいじたい)でてよよむともわれはいとはじ恋は益(ま)すとも
巻四(七六四)
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あなたが百歳になって老いしまりのない口から舌が出てよろけようとも、私は嫌いにはなりませんよ。恋が増すことはあっても。
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この歌は紀女郎(きのいらつめ)が贈った巻四(七六二) と 巻四(七六三)の歌に、大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)が答えた一首。
「自分のような老いた身では恋をしても後に辛い思いをするだけ…」と、戯れて詠んだ紀女郎の歌に対して「あなたが百歳になって老いしまりのない口から舌が出てよろけようとも、私は嫌いにはなりませんよ。恋が増すことはあっても。」とずいぶん思い切った表現で答えていますね。
正直なところ恋歌の表現としては老いた状況を具体的に出し過ぎな気もしますが、これは紀女郎が自身で老いた身とは言ってはいても見た目にはまだまだ若さを保っていたために気づかいをする必要がなかったためでしょう。
(この時代、平均寿命が短かったこともあって女性は三十代ぐらいになるとすでに自身でも周囲からも若いと思われなかったようです。)
家持のこの歌もそんな老いを意識した紀女郎の戯れに付き合いながら、何年経っても変わらない愛を詠って魅力ある一首ですよね。
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万葉集巻四
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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