万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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黒木取り草(かや)も刈(か)りつつ仕(つか)へめど勤(いそ)しき奴(わけ)と誉(ほ)めむともあらず
〔一(ある)は云はく、仕ふとも〕
巻四(七八〇)
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黒木を取り草を刈ってお仕えしようとも勤勉な奴と誉めてくださることはないでしょうね。〔一は云はく、お仕えしたとしても〕
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この歌も久邇京(くにのみやこ)にいる大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)が、平城京の紀女郎(きのいらつめ)に贈った五首の相聞歌のうちの一首。
先の巻四(七七九)の歌で、「板葺になさる黒木の屋根についてはお任せください。山が近いので明日にでも取って来てお持ちいたします。」と自身の久邇京(くにのみやこ)での暮らしを伝える意味も込めて歌を詠んだ家持でしたが、こちらではさらに続けて「黒木を取り草を刈ってお仕えしようとも勤勉な奴と誉めてくださることはないでしょうね。」と詠っています。
これは巻四(七七七)との歌意と同じく家持が長い間逢いに行かなかったことで紀女郎が怒っているだろうとの意味ですが、もちろんこれも戯れで詠っているだけでほんとに紀女郎が怒っているとは家持もまったく思っていないわけですね。
それよりもむしろ、この歌に込められた家持の本心は久邇京遷都への不満にあったのではないかと僕には思えます。
聖武天皇の久邇京への遷都宣言は唐突に行われましたが、しかしその造営が終わらぬうちに聖武天皇の久邇京への興味は急速に薄れ今度は紫香楽宮(しがらきのみや)に移り、さらに難波宮に遷都。
その後また紫香楽宮に戻り、そこでも火事や天災などが起こったことを理由に、久邇京への遷都からわずか五年でふたたび平城京へ戻ってしまうという大混乱ぶりでした。
家持の「黒木を取り草を刈ってお仕えしようとも勤勉な奴と誉めてくださることはないでしょうね。」とは、じつは紀女郎に対して言ったものではなく、久邇京造営に勤しんでいる自分たちの苦労を全く理解してくれない聖武天皇への不満を暗に込めて紀女郎に訴えたものだったように思うのは僕だけでしょうか。
家持にとって紀女郎とは、そんな弱音や不平を聞いてくれる姉のような母親のような存在だったと僕には感じられるのです。
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万葉集巻四
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