万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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春雨(はるさめ)を待つとにしあらしわが屋戸(やど)の若木(わかぎ)の梅もいまだ含(ふふ)めり
巻四(七九二)
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春雨を待っているのでしょう。私の家の若木の梅もまだ蕾です。
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この歌も藤原朝臣久須麿(ふじはらのあそみくすまろ)が大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)の娘に求婚したときの相聞歌で、娘の父である家持からの返事の巻四(七九〇)の歌などに久須麿がさらに答えた二首のうちのひとつ。
家持が贈った巻四(七八二)の梅の歌に呼応して詠まれた一首ですが、こちらはどうやら実景を詠ったもののようですね。
「春雨を待っているのでしょう。私の家の若木の梅もお嬢様とおなじようにまだ蕾です。」と、自身の家の梅の花の情景で家持に同感して、「娘が成長するまでもうしばらく待ってほしい」との家持の気持ちに了承したことを伝えています。
こうしてみると、この藤原久須麿という人はなかなかに清々しい人物だったようですね。
この後の久須麿と家持の娘の関係がどうなったのかについては、残念ながら歴史の資料にははっきりとは残っていないようです。
(家持が娘婿の南右大臣家の藤原二郎に贈った歌が巻十九にあるので、あるいはこの藤原二郎が久須麿のことだった可能性はありそうですが。)
ただ、この歌の時期からはるかに先の話になりますが、久須麿は父の藤原仲麿(ふじはらのなかまろ)が起こした反乱に加わって非業の最期を遂げることになります。
まあ、そこに至るまでに橘諸兄(たちばなのもろえ)を追い落とした仲麿が朝廷の権力を牛耳り藤原一族が再び栄華を極めるなど、さまざまな紆余曲折があるのですが…
久須麿の歌は万葉集にこの家持との相聞歌しか登場しないので、その後の久須麿についても最後に少しだけ解説しておきました。
以上、藤原久須麿が大伴家持と交した相聞歌でした。
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万葉集巻四
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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