万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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直(ただ)に逢はず在(あ)らくも多く敷栲(しきたへ)の枕離(さ)らずて夢(いめ)にし見えむ

巻五(八〇九)
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直接逢えずにいる日が重なってしまいました。敷栲の枕辺に必ず夢に見えることでしょう。
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この歌も先の巻五(八〇八)の歌と同じく、大宰府に居た大伴旅人(おほとものたびと)が贈った二首の歌に、奈良の都の人物が返した返歌のうちのひとつです。

先の巻五(八〇八)の歌が旅人の贈った巻五(八〇六)の歌への返歌だったのに対して、こちらの歌は巻五(八〇七)の歌への返歌となっています。

巻五(八〇七)の歌で旅人が「現実には逢う術もありません。ぬばたまの夜の夢に絶えずあなたを見たいものです。」と贈ったのに対して、こちらでは「直接逢えずにいる日が重なってしまいました。敷栲の枕辺に必ず夢に見えることでしょう。」と、夢の中で逢うことを誓っています。

この時代、夢に人が出て来るのはその人が自分のことを深く思ってくれている証だと考えられていました。
ですから、この歌の作者も「自分がこれほどまでにあなたのことを思っているのですから、必ずあなたの夢の中に現れて逢えるでしょう」と言っているわけですね。

旅人と奈良の都の人物との間にこれらの手紙や歌のやり取りが行われたのは千数百年も前の話ですが、こうして読んでいるとまるで現在を生きる人々の歌のやり取りを見ているような気すらしてきますよね。


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万葉集巻五


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1145円(税別)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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