万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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青柳(あをやなぎ)梅との花を折りかざし飲みての後は散りぬともよし
笠沙弥(かさのさみ)
巻五(八二一)
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青柳を折り梅をかざして酒を飲んだその後はもう散ってしまっても満足だ。
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この歌も巻五(八一五)の歌などと同じく、大宰師の大伴旅人(おほとものたびと)の邸宅で開かれた宴席で詠まれた「梅花(うめのはな)の歌」三十二首の歌のうちのひとつ。
笠沙弥(かさのさみ)は、沙弥満誓(さみのまんせい)のこと。
「青柳(あをやなぎ)梅との花」は、「青柳と梅の花」の意味でしょうか。
歌の内容はそんな「青柳を折り梅をかざして酒を飲んだその後はもう散ってしまっても満足だ。」と、この宴が終わればもう花が散ってしまっても悔いはないとの、この場の楽しさに心から満足している心情を詠っています。
これは先の葛井広成の巻五(八二〇)の歌が梅の花の「盛り」を自身たちの盛りに重ねて詠んでいたように、梅の花だけでなくこの後は人生が散ってしまっても悔いはないとの至高の満足感をも表しているのでしょう。
沙弥満誓は山上憶良(やまのうへのおくら)などとともに大宰府で大伴旅人が最も親しくしていた者のひとりですが、この三十二人が八人ずつ四群に別れて詠んだ「梅花(うめのはな)の歌」三十二首の第一集団は、そんな筑紫歌壇の主要人物たちが中心になっています。
沙弥満誓にとっては、この梅を愛で歌を詠む宴でのそんな親しき人々とのひとときは、まさに心からの楽しい時間だったのでしょう。
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万葉集巻五
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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