万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

スポンサード リンク


梅の花散(ち)らくは何処(いづく)しかすがにこの城(き)の山に雪は降りつつ

大監伴氏百代(ばんしのももよ)

巻五(八二三)
-----------------------------------------------
梅の花が散っているのは何処でしょうか。それにしてもこの城の山には雪が降り続いていることです。
-----------------------------------------------

この歌も大宰師の大伴旅人(おほとものたびと)の邸宅で開かれた宴席で詠まれた「梅花(うめのはな)の歌」三十二首の歌のうちのひとつ。
大監伴氏百代(ばんしのももよ)は、大伴百代(おほとものももよ)のこと。

「梅花(うめのはな)の歌」三十二首は三十二人が八人ずつ四群に別れて詠んだもので、大弐紀卿の巻五(八一五)の歌から先の大伴旅人の巻五(八二二)の歌までの八首が第一集団の歌。
そして大伴百代のこの巻五(八二三)の歌から八首が第二集団の歌となります。

歌の内容としては第一集団最後の旅人の「わが家の庭に梅の花が散る。はるか遠い天より雪が流れて来るよ。」という巻五(八二二)の歌を受け継いで、「梅の花が散っているのは何処でしょうか。それにしてもこの城の山には雪が降り続いていることです。」と詠っています。

「城(き)の山」は、大野山のことで天智四年(六六五)に天智天皇の命により山頂に城が作られたことからこう呼ばれています。
おそらくは旅人の邸宅の庭からもこの山がよく見えたのでしょうね。

本来、宴の主人に異を唱えるのは失礼なこととして好まれないのですが、これは歌の上での遊びとして旅人の詠んだ歌に異を唱えて、「あれは花が散っているのではなく実際に雪が降っているのですよ」と百代が花と雪をわざと間違えてみせたわけです。
つまりは後ろの城の山にほんとうに雪が降っているように見えるほど、目の前の梅の花が見事な盛りで花を散らせているとの旅人の庭の梅を賛美する意味なのでしょうね。

一座の皆が、雪ではなく花が散っているのだとわかっているからこそ、笑いも生まれるおどけとして成り立つ見事な表現なわけです。


スポンサード リンク


関連記事
万葉集巻五の他の歌はこちらから。
万葉集巻五


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

万葉集入門(トップページ)へ戻る

当サイトはリンクフリーです、どうぞご自由に。
Copyright(c) 2015 Yoshihiro Kuromichi (plabotnoitanji@yahoo.co.jp)


スポンサード リンク


欲しいと思ったらすぐ買える!楽天市場は24時間営業中

Amazon.co.jp - 通販