万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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松浦なる玉島川に鮎釣ると立たせる子らが家路(いへぢ)知らずも
巻五(八五六)
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松浦の玉島川に鮎を釣ろうと立っているあなたたちの家への道を私はまだ知りません。
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この歌も巻五(八五三)と同じく、「松浦河に遊ぶ」と題された一篇の歌群の一首で、主人公の男がさらに娘子に贈った三首の歌の内のひとつ。
この「松浦河に遊ぶ」の一篇は、おそらくは大宰師の大伴旅人(おほとものたびと)たちが松浦川を訪れたときにその地に関連のある神功皇后伝説の内容をもとにして詠んだ戯れ歌で、この巻五(八五六)の歌も官人のひとりが主人公の男の立場になって詠んだものなのでしょう。
歌の内容は、先の巻五(八五五)で主人公の男が「松浦川の川の瀬は光り鮎を釣ろうと立っておられるあなたの服の裾は美しく濡れておいでです。」と、娘子の鮎釣をする美しい姿を褒め称えたのを受けて、さらに「松浦の玉島川に鮎を釣ろうと立っているあなたたちの家への道を私はまだ知りません。」と続けています。
上の句で巻五(八五五)の内容に続け、更に下の句で最初の巻五(八五三)の歌と同じく娘子たちの家を問う主題に戻っているわけですね。
なかなかに上手い展開の仕方で、この松浦での宴の席に同席した人々の感嘆する息遣いまで伝わってくるような、そんな一首のように思います。
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万葉集巻五
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1145円(税別)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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