万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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帯日売(たらしひめ)神の命(みこと)の魚釣(なつ)らすと御立(みた)たしせりし石(いし)を誰(たれ)見き
〔一(ある)は云はく、鮎(あゆ)釣ると〕


巻五(八六九)
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帯日売の命が魚をお釣りになろうとしてお立ちになった石を誰が見たのでしょう〔一に云はく、鮎を釣ろうと〕
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この歌も先の巻五(八六八)の歌と同じく、大伴旅人たちが松浦遊行に出かけたときに、同行できなかった山上憶良がその心情を述べて詠んだ三首の歌のうちのひとつ。
「一に云はく」は憶良自身による三句目の別案。

「帯日売(たらしひめ)の命(みこと)」は神功皇后のことで、神功皇后が新羅出兵のおり(巻五:八一三を参照)に玉島川の石の上に立って鮎を釣り新羅征討の成否を占ったとされる故事があります。
そんな「帯日売の命が魚をお釣りになろうとしてお立ちになった石を誰が見たのでしょう」と、今ごろは旅人たちが見ているであろう玉島川の石を自分だけが見れない寂しさを詠っています。

まあ、このように読むと憶良が独り残されて拗ねているようにも感じられますが、そういうポーズを取って詠うことで旅人たちのささやかな笑いを得ようとしているわけですね。


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万葉集巻五の他の歌はこちらから。
万葉集巻五


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1145円(税別)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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