万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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たらちしの母が目見ずて欝(おほほ)しく何方向(いづちむ)きてか吾(あ)が別るらむ

巻五(八八七)
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たらちねの母に逢うこともなく心落ち込んでどこへ向かって私は別れ去るのだろう
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この歌も先の巻五(八八六)の歌と同じく、相撲使いの某国司(官位姓名)の従人となって奈良の都へと向かう途中で亡くなった大伴君熊凝(おほとものきみくまこり)の死を悼んで、山上憶良(やまのうへのおくら)が詠んだ六首の歌のうちのひとつ。
こちらも大典麻田陽春(だいてんあさだのやす)が詠んだ巻五(八八四)の歌などに山上憶良が追和して詠んだものとなっており、麻田陽春の歌と同じく憶良が亡くなった熊凝になり切って詠んだものとなっています。

「たらちしの」は「母」に懸る枕詞。
そんな「故郷に居るたらちねの母に逢うこともなく心落ち込んでどこへ向かって私は別れ去るのだろう」と、愛しい母に逢うことも出来ずにひとり死出の旅路を行く哀しさを詠っています。
「何方向(いづちむ)きてか」は、この場合はあの世への道を知らない迷いをこのように表現したのでしょう。
これも実際に大伴君熊凝が詠んだ歌ではなく山上憶良が熊凝になり切って詠んだものですが、人間が死の間際に思い出すのはやはり家族や肉親のことなのかも知れませんね。


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万葉集巻五


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1145円(税別)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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