万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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常知らぬ道の長手(ながて)をくれくれと如何(いか)にか行かむ糧(かりて)は無しに
〔一(ある)は云はく、乾飯(かれひ)は無しに〕
巻五(八八八)
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いつもとは違う長い道のりを暗闇の中にどのようにして行こう。食べる物さえないのに
〔一は云はく、乾飯もないのに〕
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この歌も巻五(八八六)の歌などと同じく、相撲使いの某国司(官位姓名)の従人となって奈良の都へと向かう途中で亡くなった大伴君熊凝(おほとものきみくまこり)の死を悼んで、山上憶良(やまのうへのおくら)が詠んだ六首の歌のうちのひとつ。
こちらも大典麻田陽春(だいてんあさだのやす)が詠んだ巻五(八八四)の歌などに山上憶良が追和して詠んだものとなっており、麻田陽春の歌と同じく憶良が亡くなった熊凝になり切って詠んだものとなっています。
「常知らぬ道」とは、この場合は冥途への道のこと。
「くれくれ」は、暗々としたの意味。
また、「一は云はく」の部分は憶良自身の別案となっていて、「乾飯」はこの時代、旅路でのの食料として乾燥させた蒸飯を持って行ったようです。
そんな「いつもとは違う長い道のりを暗闇の中にどのようにして行こう。食べる物さえないのに」と、暗いあの世への道を行く不安を詠った内容となっています。
この歌ももちろん大伴君熊凝自身が詠んだものではなく憶良が熊凝の気持ちになり切って詠んだものですが、死を前にした人間の心情とはおそらくこの歌のようなものなのでしょうね。
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万葉集巻五
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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