万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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一世(ひとよ)には二遍(ふたたび)見えぬ父母を置きてや長く吾(あ)が別れなむ
〔一(ある)は云はく、あひ別れなむ〕
巻五(八九一)
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一度限りのこの世では二度と逢うことの出来ない父や母を置いて私は永遠に別れてしまうのだろうか
〔一は云はく、お互いに別れ別れになってしまうのだろうか〕
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この歌も巻五(八八六)の歌などと同じく、相撲使いの某国司(官位姓名)の従人となって奈良の都へと向かう途中で亡くなった大伴君熊凝(おほとものきみくまこり)の死を悼んで、山上憶良(やまのうへのおくら)が詠んだ六首の歌のうちのひとつ。
こちらも大典麻田陽春(だいてんあさだのやす)が詠んだ巻五(八八四)の歌などに山上憶良が追和して詠んだものとなっており、麻田陽春の歌と同じく憶良が亡くなった熊凝になり切って詠んだものとなっています。
こちらも「一に云はく」以降は、憶良自身による結句の別案。
歌の内容は「一度限りのこの世では二度と逢うことの出来ない父や母を置いて私は永遠に別れてしまうのだろうか」と、この歌でも父母を残してあの世に旅立って行かねばならない熊凝の無念を詠っています。
これまでに何度も書いてきたようにこれらの歌自体は実際には山上憶良が大伴君熊凝になり切って詠んだものですが、熊凝にもきっと実際に故郷に残してきた父母が居たのでしょう。
そんな両親が可愛いわが子の死を知ってどれほど悲しんだかを思うと、なんともやり切れない思いがしますね。
以上、山上憶良が大伴君熊凝の死を悼んで詠んだ六首の歌の解説でした。
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万葉集巻五
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1145円(税別)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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