万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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富人(とみひと)の家の児どもの着(き)る身無(みな)み腐(くた)し棄(す)つらむ絹綿(きぬわた)らはも
巻五(九〇〇)
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裕福な家の子供の着るのも追いつかずに腐らせて棄ててしまっている絹や綿の服よ
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この歌も巻五(八九八)の歌などと同じく、山上憶良(やまのうへのおくら)が老いて病を重ねる自身の身を嘆いて詠んだ七首の歌のひとつで、巻五(八九七)の長歌に付けられた反歌のうちのひとつ。
「絹(きぬ)」はこの場合は太い織り糸の絹の紬(つむぎ)類のことで。現在で言う絹より劣るもの。
そんな「裕福な家の子供の着るのも追いつかずに腐らせて棄ててしまっている絹や綿の服よ」と、裕福な家の子は着る身体が追いつかないほどの服を持って腐らせているのに、自身の子は着る物にも不自由している身分の違いを嘆き悲しんだ一首となっています。
まあ、実際には山上憶良は筑前国司を務めたほどの高級官僚でもあり、むしろ裕福な側の人間だとも思うのですが、そんな身分でも暮らし向きは裕福とは言えないのが実際だったのでしょうか。
あるいは憶良の身分は遣唐使として大陸に渡った知識を買われての憶良一代の出世でもあり、憶良が死んだ後に残される子供たちの身を心配してのこのような表現であったのかも知れませんね。
どちらにしても、おなじ人間に生まれながら身分や貧富の差のある世の中を悲しんだ、この歌もなんとも憶良らしい魅力の一首のように感じます。
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万葉集巻五
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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