万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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水沫(みなわ)なす微(いや)しき命も栲繩(たくなは)の千尋(ちひろ)にもがと願ひ暮しつ
巻五(九〇二)
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水の泡のように取るに足らない命とはいえ栲繩の千尋のように長くあってほしいと願って暮して来たのだ
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この歌も巻五(八九八)の歌などと同じく、山上憶良(やまのうへのおくら)が老いて病を重ねる自身の身を嘆いて詠んだ七首の歌のひとつで、巻五(八九七)の長歌に付けられた反歌のうちのひとつ。
「千尋(ちひろ)」は「一尋(両手を広げた長さ)」の千倍で、途方もなく長いこと。
そんな「水の泡のように取るに足らない命とはいえ栲繩の千尋のように長くあってほしいと願って暮して来たのだ」と、こちらでも命の儚さを憂いて長寿を願う思いを詠っています。
実際、憶良はこれらの歌を詠んだすぐ後に亡くなってしまったようですが、寿命を延ばせるものならばもっと生きたいとの願いを最後まで持っていたようですね。
下手に悟りを開いたような態度を取らずに、命の儚さを嘆きながらこの世を去ったその最期は、人生派歌人ともいわれる憶良らしい人間味のある終わり方だとも言えるでしょう。
奈良市五劫院にあるこの歌の歌碑。
歌碑裏。
奈良市北御門町にある五劫院。
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万葉集巻五
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1145円(税別)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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