万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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布施(ふせ)置きてわれは乞ひ祈(の)む欺(あざむ)かず直(ただ)に率去(ゐゆ)きて天路(あまぢ)知らしめ

右の一首は、作者いまだ詳(つばひ)らかならず。ただ、裁歌(さいか)の体、山上(やまのうへ)の操(みさを)に似たるを以ちて、この次に載す。

巻五(九〇六)
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お布施を置いて私は乞い祈ります。欺いたりせずまっすぐに連れて行って天への道を教えてやってください
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この歌も先の巻五(九〇五)の歌と同じく、古日(ふるひ)という幼子の死を悲しんだ三首の挽歌のひとつで、巻五(九〇四)の長歌に付けられた反歌のうちのひとつ。
左注に「右の一首は、作者いまだ詳(つばひ)らかならず。ただ、裁歌(さいか)の体、山上(やまのうへ)の操(みさを)に似たるを以ちて、この次に載す。」とあるように、もともとは独立した歌であり作者もはっきりとしないようですが、山上憶良(やまうへおくら)の作風に似ているのでここに載せたとあります。
このことからも、この前の二首(巻五:九〇四の長歌と巻五:九〇五の歌)が山上憶良の作であることがわかりますね。

歌の内容は先の巻五(九〇五)とよく似ていて、「お布施を置いて私は乞い祈ります。欺いたりせずまっすぐに連れて行って天への道を教えてやってください」と、あの世の使いに亡くなった我が子の道案内を願う一首となっています。
親ならば誰でも幼いわが子の一人旅は気が気でなりませんよね。

しかしあの世にまでは着いて行くことも出来ず、お布施を置いてあの世の使いに祈ることしか出来ないもどかしさがよく表れている一首のように思います。
この歌が実際に誰の作品でどのような経緯で詠まれたものなのかはわかりませんが、古日の親もこの歌の子の親も、幼い子を亡くした親は皆このように亡くなった子がせめてあの世で幸せになれることを願ってこころの慰めとしたのでしょう。

以上、古日(ふるひ)という幼子の死を悲しんだ三首の挽歌の解説でした。


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万葉集巻五の他の歌はこちらから。
万葉集巻五


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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