万葉集入門
万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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或(ある)本の反歌に曰(い)はく

神柄(かむがら)か見が欲(ほ)しからむみ吉野の滝(たぎ)の河内(かふち)は見れど飽かぬかも

巻六(九一〇)
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神々しき場所だから見たいと思うのだろうか、吉野の水流激しき河内は何度見ても飽きないことだなあ。
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この歌は題詞によると、巻六(九〇七)の長歌に付けられた反歌として或る本に集録されている三首のうちの一首なのだそうです。

おそらくは巻六(九〇八) や 巻六(九〇九)の歌の原型であったか、あるいはこの歌以降の三首も合わせて本来は計五首の反歌として笠朝臣金村(かさのあそみかなむら)によって詠まれていたものが、様々な書物に集録される過程で編者などの都合や好みで時に抜け落ちたりしたのでしょう。

歌の内容としては吉野川を神々しき川として讃め称える典型的な土地讃めのうたであり、結句の「見れど飽かぬかも」も他の土地讃め歌などでよく見られる表現ですね。
まあ、この手の歌は現在のような文学作品ではなく神々に対して言霊の力で加護を得ようと働きかける呪術歌であるので、他の人物が詠んだ歌と類似していてもまったく問題はなかったのです。
みなさんも、神社でお参りするときに自分の願い事が他の人の願い事と類似しているかどうかなど問題にしませんよね(笑)
万葉集の時代の祈りの歌はそんな「お参りの願い事」などを言霊の力でさらに高めたものだと考えてくだされば近いかと思います。


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万葉集巻六の他の歌はこちらから。
万葉集巻六


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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