万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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若の浦に潮満ち来れば潟(かた)を無み葦辺(あしへ)をさして鶴(たづ)鳴き渡る
右は、年月を記さず。ただ玉津島に従駕(おほみとも)すといへり。因りて今行幸(いでまし)の年月を検(かむが)へ注(しる)して以ちて載す。
巻六(九一九)
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和歌の浦に潮が満ちて来ると潟がなくなり、葦のほとりをめざして鶴が鳴き渡るよ
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この歌も先の巻六(九一八)の歌と同じく、聖武天皇(しやうむてんわう)が紀伊国(きのくに)に行幸された時に山部宿禰赤人(やまべのすくねあかひと)が詠んだもので、巻六(九一七)の長歌につけられた二首の反歌のうちのひとつ。
「若の浦」は現在の「和歌浦」のことで、雑賀崎南の湾入。
ちなみに和歌浦はもとは「弱浜(わかのはま)」と言い、この歌が詠まれた行幸の十六日に聖武天皇によって「明光(あか)の浦」と改名されたそうです。
さらに「和歌浦」と改められたのは平安時代になってのこと。
そんな「和歌の浦に潮が満ちて来ると潟がなくなり、葦のほとりをめざして鶴が鳴き渡るよ」と、満ち潮で潟が無くなったために葦のほとりをめざして鳴き渡ってゆく鶴の情景を詠っています。
まあ、一見すると単なる情景歌ですが鶴が鳴き渡るとはそれほどに豊かな海であることを意味していて、この歌もまたそんな和歌浦の豊かさと美しい情景を鶴を通して褒め称えた土地讃めの一首なわけですね。
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万葉集巻六
万葉集書籍紹介(参考書籍)
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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