万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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皆人の命もわれもみ吉野の滝(たぎ)の常盤(ときは)の常(つね)ならぬかも
巻六(九二二)
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すべての人々の命も私の命も吉野の滝の岩石のように変わらずにあってほしいものです
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この歌も先の巻六(九二一)の歌と同じく、聖武天皇(しやうむてんわう)の吉野行幸に従駕した笠朝臣金村(かさのあそみかなむら)の詠んだ一首で、巻六(九二〇)の長歌に付けられた反歌の内のひとつ。
「常盤(ときは)」は岩石のこと。
そんな吉野川の岩石のように「すべての人々の命も私の命も吉野の滝の岩石のように変わらずにあってほしいものです」と詠った、言霊の祈りの歌となっています。
笠金村たち聖武天皇の時代の人々の歌になるとどうしても歌が持つ言霊の力にもかつての柿本人麿たちのような力強さが薄れてしまっているように感じるのですが、それでも金村たちは金村たちなりの信仰の形を持って吉野の土地の神々に祈りの言葉を捧げたのでしょうね。
そんな奈良時代の宮廷歌人の姿が垣間見えて、この歌もまた静かな魅力のある一首のように思います。
吉野川の常盤。
吉野町喜佐谷にあるこの歌の歌碑。
象の小川の前に立っています。
歌碑裏の解説。
歌碑は宮滝から桜木神社の前の道を通って吉野山へ向かう喜佐谷の道の途中にあります。
(写真の白丸の場所が歌碑。写真奥が吉野山方面。)
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万葉集巻六
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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