万葉集入門
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現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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雲を詠める

痛足川(あなしがは)川波立ちぬ巻目(まきもく)の由槻(ゆつき)が嶽(たけ)に雲居(くもゐ)立てるらし

巻七(一〇八七)
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痛足川には川波が立ってきた。巻目の由槻が嶽に雲が湧き起こっているらしい
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この歌は万葉集巻七の「雲を詠める」に分類された歌のうちのひとつ。
作者は不明ですが、次の巻七(一〇八八)の歌の後に付けられた左注によると柿本朝臣人麿歌集に収録されていた歌とのことです。

「柿本朝臣人麿歌集」は、その名の通り柿本人麿によって編まれた歌集で人麿自身の歌や朝廷などで集めた歌を中心に収録されていたようですが、現存していないために詳しいことは不明。
(「柿本朝臣人麿歌集」は山上憶良の編んだ「類聚歌林(るいじうかりん)」とともに万葉集以前から存在した歌集ですがどちらも残念ながら現存しておらず、現存する最古の歌集が「万葉集」)。
この歌も、柿本人麿自身の作か、あるいは人麿が収集した歌のひとつだったのでしょう。

歌の内容は「痛足川には川波が立ってきた。巻目の由槻が嶽に雲が湧き起こっているらしい」と、痛足川の川の水が波立って来たことから上流の巻目の由槻が嶽に雨雲が湧き起こっているのだろうと想像した一首となっています。

「痛足川(あなしがは)」は穴師川で巻向川ともいい、奈良県桜井市巻向の穴師の地を流れる川。
「巻目(まきもく)」は巻向(まきむく)とおなじで、奈良県桜井市の巻向のこと。
「由槻(ゆつき)が嶽(たけ)」は巻向山中の主峰。

内容としては穴師を訪れた旅人が詠んだ歌とも取れますが、どちらかというと穴師の地の人々の間に詠い継がれてきた生活の中の歌という感じが強いような気もします。
そんな巻向の穴師の地に根付いた、どことなく万葉時代の現地の人々の息遣いが聞こえるような一首ですよね。


奈良県桜井市の巻向山。
穴師山(左)と三輪山(右)に挟まれた真ん中の山が巻向山です。
「由槻(ゆつき)が嶽(たけ」とは巻向山の峰のひとつをそう呼んだのでしょう。



奈良県桜井市箸中車谷の穴師川沿いにあるこの歌の歌碑。
少し斜めに傾いた盤面に巻向山の風景が描かれたなんともめずらしい歌碑で、僕が一番好きな万葉歌碑のひとつです^^



添碑。



穴師川(巻向川)。



この歌碑は奈良県桜井市の檜原神社の前の山辺の道を北へ抜けて、舗装された道を西へ少し下ってすぐの石段下の穴師川沿いに立っています。
巻二(一五七)の歌碑や、巻八(一二六九)の歌碑のすぐ側です。


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万葉集巻七の他の歌はこちらから。
万葉集巻七


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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