万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大伴家持の贈り和(こた)へたる歌二首
わが君に戯奴(わけ)は恋ふらし賜(たば)りたる茅花(ちばな)を喫(は)めどいや痩(や)せ痩す
巻八(一四六二)
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わが君に私めは恋しているようです。頂いた茅花を食べてもどんどんと痩せていきます
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この歌は、紀女郎(きのいらつめ)が贈った巻八(一四六〇) などの歌に大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)が返して贈った二首の歌のうちのひとつ。
紀女郎が巻八(一四六〇) で「おまえのために私が手も休めずに春の野で抜き摘んだ茅花ですよ。食べてお太りなさい。」と茅花に添えて歌を贈ったのに対して、こちらでは「わが君に私めは恋しているようです。頂いた茅花を食べてもどんどんと痩せていきます」と恋歌仕掛けで返しています。
「わが君」とは紀女郎のことで、巻八(一四六一)の歌で紀郎女が自身のことを戯れで「君」と表現したのに従った表現。
おなじく家持が自身のことを「戯奴(わけ)」と呼んでいるのも紀女郎が贈った巻八(一四六〇) の歌の表現に従った戯れですね。
さらには紀女郎が「(私の摘んできた茅花を)食べてお太りなさい。」と詠い掛けたのに対して、「(あなたへの恋心のために)茅花を食べてもどんどんと痩せていきます」とさすが家持らしい上手な返し方をしていますよね。
大伴家持と紀女郎はこのような戯れの恋歌などを他にも多く交し合っていますが、この歌もまたそんな二人の仲の良い関係を感じさせてくれる素敵な相聞歌のように思います。
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万葉集巻八
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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